2025年版・年末調整のポイント
――還付が増えやすい年だからこそ、「資金繰り」を甘く見ないでください

2025年(令和7年分)の年末調整は、ここ数年の税制改正の集大成のような年で、「去年と同じでしょ?」では通用しない内容になっています。
基礎控除・給与所得控除の見直し、扶養の所得要件の引き上げ、新設された「特定親族特別控除」などにより、従業員側の所得税は軽くなりやすく、その結果として還付額が増えやすい構造になりました。
一方で、事業者側にとっては、「従業員に返すお金(還付)」が増える=一時的に資金が社外に出ていくことを意味します。特に、
- 従業員数が10名を超え、源泉所得税の納付が「毎月納付」の事業者
- スタッフ数10〜30名程度の、いわゆる「中小規模」の事業者
- 医療・介護・福祉など、パート・アルバイト比率が高い業種
このあたりの事業者は、2025年の年末調整で資金繰りへの影響が特に出やすいゾーンだと感じています。この記事では、今年の制度改正のポイントを押さえながら、若手税理士目線で「資金繰りリスクにどう備えるか」をお伝えします。
1.2025年・年末調整はここが変わる(超ざっくり3ポイント)
詳細は国税庁の「年末調整がよくわかるページ」や「令和7年分 年末調整のしかた」で丁寧に解説されていますが、まずは実務に直結するところを3つに絞って整理します。
(1) 基礎控除・給与所得控除の引き上げ
これまで多くの方が一律48万円だった基礎控除は、2025年分から合計所得金額に応じて58万〜95万円の範囲で段階的に引き上げられます。
同時に、給与所得控除の最低保障額も55万円 → 65万円に引き上げとなりました。
ざっくり言うと、同じ年収でも、これまでより「課税される所得」が小さくなる人が増えるイメージです。その分、年間の正しい税額(年税額)は下がりやすくなり、すでに天引きしている源泉所得税との「差額=還付」が大きくなるケースが増えます。
(2) 扶養・配偶者などの所得要件の引き上げ
2025年の改正でもう一つ大きいのが、いわゆる「年収の壁」の引き上げです。扶養親族や同一生計配偶者などの合計所得金額要件が48万円 → 58万円に上がりました。
給与だけの人で言えば、「103万円の壁」だったものが「123万円の壁」に変わります。
つまり、パート・アルバイトで働くご家族が年収123万円までは扶養から外れずに働けるようになったイメージです。
医療・介護・福祉の現場では、「扶養の範囲で働きたい」というパートさんが非常に多いので、この改正の影響をモロに受けやすい業種と言えます。
(3) 「特定親族特別控除」の創設 ほか
19〜22歳の一定の親族などを対象とした「特定親族特別控除」が新設されました。大学生のお子さんがいるご家庭などは、従来よりも税負担が軽くなる可能性があります。
まとめると、「控除が広がる方向」への改正が多く、結果として年末調整で税金が戻ってくる人が増えやすいというのが、2025年の大きな特徴です。
2.なぜ今年は「還付が多くなりやすい」のか?
年末調整は、1〜12月までの給与・賞与に対して概算で天引きしてきた所得税と、年末に計算した「本来の税額」を精算する作業です。
- 基礎控除・給与所得控除が増える
- 扶養に入れる家族の範囲がやや広がる
- 特定親族特別控除など、新たに使える控除がある
ということで、「本来の税額」が下がりやすい=払いすぎていた分が増えやすい年です。
従業員にとっては嬉しい話ですが、事業者にとっては「年末〜年始のキャッシュフローにインパクトが出る可能性」がある点を無視できません。
3.特に要注意なのは「従業員10〜30名」&「毎月納付」の事業者
日本の源泉所得税の納付方法は、原則として「翌月10日までに前月分を納付」ですが、従業員10名以下の小規模事業者は、一定の届出により「年2回まとめて納付」(納期の特例)を選べる仕組みがあります。
逆に言うと、以下の事業者は年末調整と源泉税の納付タイミングがダイレクトに資金繰りへ響きやすい層です。
- 従業員が10名を超えている
- 納期の特例は使わず、毎月源泉所得税を納付している
さらに、従業員数がおおむね10〜30名くらいの規模だと、一番「還付の重さ」が効いてしまうゾーンになります。
4.数字でイメージする「資金繰りインパクト」
少しイメージをつかんでいただくために、ざっくりした例を挙げてみます。
【モデルケース】
- 職員:20名(うちパート・アルバイトが10名)
- 源泉所得税は毎月納付
- 1人あたりの年末調整での平均還付額:4万円(仮定)
⇒ 年末調整でのトータル還付額:4万円 × 20人 = 80万円
12月の給与支給時には、従業員に対して「いつもの手取り額+還付分」を支払うことになりますので、現金ベースでは一時的に80万円多く資金が出ていくことになります。
翌年1月の納付額で相殺されるとはいえ、賞与支給や借入金返済などが重なる年末に、さらに80万円〜100万円規模の一時的な資金流出が増えるとなると、資金繰り表の組み方次第では冷や汗ものです。
5.10〜30名規模の事業者が「今」やっておきたい7つの準備
- 対象者の「ざっくり人数」を把握する
- 給与・年末調整ソフトのアップデート確認
- 還付総額の「粗い試算」をしてみる
- 年末〜年始の資金繰り表を更新する
- 従業員への説明と期待値コントロール
- 書類様式と運用の確認
- 「困ったらすぐ相談できる窓口」を決めておく
6.医療・介護・福祉事業者が押さえておきたい「業界ならでは」の視点
2025年は、「103万円の壁 → 123万円の壁」への移行により、これまで「扶養から外れるから」とシフトを抑えていた方が、少し多めに働けるようになっているケースもあります。
その結果、扶養の判定が微妙なラインになる職員が増え、年末調整の申告ミスが起こりやすくなります。
こうした現場では、年末調整の前に「個別相談の時間」を少しだけ確保してあげるだけでも、後々のトラブルをかなり減らせます。
7.若手税理士としてお伝えしたいこと
2025年の年末調整は、間違いなく「例年より気を遣うべき年」です。
大事なのは、以下の3点です。
- 「制度が変わった」という事実を正しく理解すること
- 自社の規模・業種にとって、どの部分が特に効いてくるのかを見極めること
- 資金繰りのインパクトを事前にイメージしておくこと
この3つさえ押さえておけば、あとはプロと一緒に一つ一つ解決していけます。
当事務所では、「クラウドやデジタルツールをしっかり使いこなしつつ、現場感のあるサポートをすること」を大切にしています。
・2025年の年末調整の具体的な進め方を知りたい
・医療・介護・福祉の現場に即した説明資料を作りたい
・今年の還付額が資金繰りにどれくらい影響しそうか試算してほしい
こういったお悩みがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。